サーモグラフィ(高性能赤外線カメラ)で見えない欠陥を視る(1)

高性能赤外線カメラの非破壊検査装置としての応用が拡大しているが、ここでは測定体に外部から積極的に温度変化を与えるパッシブ法を中心に、JFE テクノリサーチで開発した“見えない欠陥を視る”技術を紹介する

はじめに

受託計測

量子型の撮像素子を用いた高性能赤外線カメラは非常に応答性がよい。積極的に温度変化を加えて測定するアクティブ法を利用して“見えない欠陥を視る”ことが可能となる。従来の温度場から欠陥を見つけるパッシブ法に比較すると、検出力は飛躍的に大きくなる。温度変化の与え方としては、加熱ランプや通電などによる加熱法、荷重負荷による熱弾性発熱法、超音波などによる加振発熱法、などがある。
 JFE テクノリサーチでは、高性能赤外線カメラを用いた測定受託、開発支援、およびシステム開発品の販売を行い、ユーザから評価をいただいてきた。ここではいくつかの開発品についてご紹介する。

周期加熱法:「Thermo-Tec CH」

加熱用ランプなどにより周期的に検出体を加熱する方法である。内部の割れや材質の不均一は熱拡散率に差を生じさせ、結果として部品内を通過する温度波の透過時間に差を生じる(図1)。

図1 欠陥や材質不均一による温度波の透過時間差
図1 欠陥や材質不均一による温度波の透過時間差

これを高性能赤外線カメラによって測定し、熱拡散方程式から導き出された算出式(1)を用いて熱拡散率の2 次元画像分布を作成することで欠陥の箇所を表示する。

算出式(1)

原理は温度波法(ISO22007-3)で、欠陥検出だけでなく、レーザーフラッシュ法では測定できない大型実部品の熱拡散率や熱伝導率の分布測定にも用いることができる。
 2 次電池、燃料電池、太陽電池などの電池に用いられる材料は機械的、化学的、熱的負荷により劣化を生じるが、熱物性の変化として捕えることができる。図2 は周期加熱法によりプラスチックフィルムに生じた熱拡散率の2 次元不均一分布画像を示す。劣化により熱拡散率が極端に低下した箇所が観察される。

図2 電池のプラスチックフィルムに生じた熱拡散率低下欠陥
図2 電池のプラスチックフィルムに生じた熱拡散率低下欠陥

積層パッキングされた2 次電池では、筐体がアルミ樹脂フィルムの場合、表面フィルムおよびアルミ箔を溶解して内面フィルムを残し、周期充放電によって熱拡散率の分布をその場観察する。しかし強度を要求されるアルミ板の筐体電池では、量子撮像素子の励起波長を透過する特殊ガラスもしくは樹脂を加工して筐体を作成する。周期充放電か中央部に加熱体を挿入して熱拡散率の2 次元分布を表示し、短絡や異物およびガス噛みなどの異状部を検出する。これら一連の測定作業は非暴露で行われる(図3)

図3 2 次電池の熱拡散率分布測定装置
図3 2 次電池の熱拡散率分布測定装置

多層メッキ材や電鋳鋳型では層間剥離や不純物混入などの欠陥も熱拡散率の不均一分布として同様に検出できる。熱拡散率が塑性加工によって大きく変化しない材料では板厚欠陥検出装置として利用できる。自動車用鋼板のプレス加工においては、深絞りによって局所的な絞り減肉(ネッキング)が発生して欠陥となるが、目視判定が困難で見落とすリスクが高い。しかし曲面上の微小な凹みは超音波厚み計では測定が困難である。プレス鋼板に裏面から加熱ランプによって周期加熱し、板厚を通過した時間差を表面から高性能赤外線カメラで捕え、式(1)により板厚を算出して2 次元画像として欠陥部を表示できる。
 以上は温度波が板厚を透過する方法を説明したが、球状部品の様に裏面から加熱ができない場合は、加熱と測定を同一方向から行い、温度波が欠陥部から反射して帰ってくる時間差によって熱拡散率の分布を表示する。

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JFEテクノリサーチ株式会社 営業本部