サーモグラフィ(赤外線カメラ)による高性能温度測定と応力測定「解説」(1)

はじめに

受託計測

最近、赤外線サーモビュアーの手法が原子力施設の保全技術指針(JEAG4223-2008)や建築基準法第12条「定期報告制度」(平成20年4月1日)において適用され注目されている。また日本サーモグラフィー協会も設立されることとなり、この分野の啓蒙と測定者の資格認定制度もスタートする状況にある。しかし欧米に比較すると赤外線カメラの高度利用は遅れているのが現状である。赤外線カメラのハード、ソフトは近年飛躍的に進歩して図1に示す様に応用範囲も拡大しており、以前経験された方のイメージとは異なる赤外線サーモグラフィーとなっている。最近の赤外線サーモグラフィーによる測定事例をご紹介する。

図1 赤外線カメラの応用範囲の拡大 図1 赤外線カメラの応用範囲の拡大

高性能温度測定

赤外線カメラの性能の基本は温度精度であるが、もう一つの大きな因子は撮影速度である。最近の飛躍的な応用の進歩は撮影速度の向上による部分が大きい。汎用赤外線カメラの上位機種の温度分解能(NETD)は6/100℃であるが、高性能赤外線カメラは2/100℃程度と3倍程度の温度分解能差である。一方、撮影速度では汎用タイプの60コマ/sに対して、380コマ/sと6倍以上である。さらに撮影画素数を少なくすれば最大20,000コマ/sと300倍以上で、高速度カメラ並みの撮影が可能である。自動車用鋼板の衝突吸収エネルギーの向上は安全と軽量化に貢献しているが、その評価は高速変形時の発熱量からできる。図2は高性能赤外線カメラによる高速引張試験の測定結果である。発熱のピーク温度は1msの間に発生し, 試験片の温度分布も均一ではないことが温度分布画像から分かる。17ms/コマの汎用カメラではこの現象を捉えることが出来ない。

図2 自動車用鋼板の衝突吸収エネルギー測定 図2 自動車用鋼板の衝突吸収エネルギー測定

応力測定技術

赤外線カメラによる応力測定の原理は、100年以上前にケルビン卿(1824~1907)が熱弾性効果として論文発表している。エアコンはご存知の様に、気体を圧縮して発熱させて室外に熱を放出し、その後、膨張させて冷熱を室内に取込んでいる。これに比べて金属、セラミックス、プラスチックなどの固体では体積変化に対する発熱は非常に小さい。例えば1MPaの応力を鋼片に加えて圧縮した場合の温度変化は、僅か1mKの温度上昇である(図3)。逆に1MPaの引張応力を加えた場合は、1mKの温度降下が発生する。

図3 熱弾性効果(鋼の場合) 図3 熱弾性効果(鋼の場合)

この熱弾性効果は式1に示す様にシンプルな一次式である。

算式1

温度変化を正確に測定できれば応力も精度良く測定できる。しかし精度良く温度測定をするためには高性能赤外線カメラだけでなく、誤差を無くすためのいくつかのテクニックが必要となる。(1)荷重条件:温度変化が小さいため、熱拡散の影響を小さくするために比較的早い繰返し荷重か高速荷重が必要である。可能ならば疲労試験機を用いる方が精度良い結果を得られる。温度変化の発生しない一定荷重や残留応力などは原理的に測定できない。(2)ロックイン処理:誤差の原因となるノイズを減少させるためにデータのロックイン処理を行う。これにより誤差が1/10~1/100になる。疲労試験機が使用できる場合は、荷重もしくは変位などから繰返しの周波数をデータとして取り込んで処理する(図4)。 (3)反射率(放射率)補正:測定対象の周りは全て熱外乱で、僅かな温度変化にとっては影響が大きい。電気機器、油圧機器、照明などの比較的大きな熱源だけでなく、人や壁も全て温度外乱となる。表面が綺麗に加工された測定体は、周りの温度を表面反射して赤外線カメラに間違った情報を伝えている。これを防ぐ為に、出来るだけ黒体化塗装を行って反射率をゼロに近づけ、放射率を1に近付ける(反射率=1-放射率)。黒体化塗装が出来ない場合は、反射率補正をパソコンソフトによって行う。

図4 温度データのロックイン処理 図4 温度データのロックイン処理

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