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No.16「特許に係わる最近の動向(3)」

No.16 高精度赤外線カメラ応用例 他

特許に係わる最近の動向(3)~米国特許要件の判断基準に関する重要な判決~

背景

従来、米国での特許審査は、日欧の特許庁に比べて甘いと言われてきました。その一因として、審査の拠り所となる連邦控訴裁判所における非自明性(≒進歩性)の判断基準が、出願人に有利であったことが挙げられます。ところが最近、その上級審である連邦最高裁判所が、KSR社 対Teleflex社の特許侵害訴訟判決(127S.Ct.1727(2007))において、新たな判断基準を示し、米国での判断基準が、日欧のそれに近づきましたので、紹介します。

非自明性の新たな判断基準

新たな判断基準は、異なる先行文献に開示された公知技術を組み合せて、「発明の非自明性」(日本で特許されるための要件の一つである「発明の進歩性」に概ね相当します。)を主張するに際し、動機付けの存在を立証しなければならないという、いわゆるTSM(Teaching, Suggestion, Motivation)テストについて、より柔軟性の高い判断を行う手法を確立したものです。
具体的には、この動機付けを立証するために用いられる証拠として、発明当時の当業者の認識を柔軟に考慮できることが明確になりました。このように柔軟な判断手法が確立されたことにより、「発明の非自明性」(≒発明の進歩性)の欠如を理由として、特許出願が拒絶され、又は、特許権が無効と判断される可能性は、実質的に高くなりました。

新たな判断基準の影響、及び、対策

この結果、出願の審査においては拒絶がされ易く、また、過去に発行された特許の有効性を争う事件でも、無効と判断されるものが多くなると予想されます。
このような影響への対策として、1)出願内容の調査を十分行い、非自明性を確保した請求項で出願する、2)発明の構成の他に、発明の効果についても、明細書に十分記載することで、従来技術との差異を明確にする、等が必要になります。
これらの対策を採ることにより、自明と判断される可能性が高くなった新たな判断基準の下でも、有効な権利を取得することができ、真に企業価値の向上に資する米国特許Portfolioの形成が可能になるものと考えます。

米国特許要件の新たな判断基準に関する判決を示した米国連邦最高裁判所(Washington, D.C.)
米国特許要件の新たな判断基準に関する判決を示した米国連邦最高裁判所(Washington, D.C.)

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