No.35「電池材料の物理解析技術(4)」

No.35
電池材料の物理解析技術(4) 新型STEM-EELSによる分析事例~ Si負極の構造解析技術~
Microstructural Analysis of Silicon Anode for Lithium Ion Battery

電気自動車や家庭用蓄電デバイス向けとして、リチウムイオン二次電池の研究開発が活発化しています。高性能化に向けて電池を構成する各種材料の研究が進められる中、主要部材である電極(正極、負極)の微細構造を明らかにするための分析技術向上には多くの期待が寄せられています。

当社のOnly One 技術

これまで、充電状態にある負極の構造解析はマクロ的なX線回折等に限定されていました。当社では、走査電子顕微鏡(SEM)収差補正走査型透過電子顕微鏡(Cs-corrected STEM)を用いて、局所的に存在するLiを可視化することに成功しました。充電状態にある負極は活性が高く、水分や空気に触れると変質します。そのため、観察、分析する際には一切の大気に触れない試料ハンドリング技術を実用化しました。また、試料調整時に生じるダメージを低減するため、試料を冷却しながら加工する技術を確立するなど、多くの工夫により実現させました。

Si 負極における充電状態の微細構造観察

大気非暴露下でのアルゴンイオンミリング加工と大気非暴露下でのアルゴンイオンミリング加工
図1 大気非暴露下でのアルゴンイオンミリング加工
により断面加工したSi負極のSEM像
大気非暴露下でのアルゴンイオンミリング加工
(HAADF-STEM像、EELSマッピング
および抽出したスペクトル)

Siなどの合金系材料は、Liを吸蔵する容量が大きく、次世代の負極材料として期待されています。このSi負極は充放電時の体積変化にともなう性能劣化が課題となっていますが、これまで、負極へのLiの吸蔵経路が解明されていませんでした。

図1は、結晶性Siを用いて電池を試作し、充電後の負極をSEM観察した画像です。充電40%ではSi粒子内に網目状の変質部が観察されました。図2は、このSi負極を、集束イオンビーム(FIB)で薄片に加工し、新型STEMを用いて拡大観察した画像です。また、同一部位を電子エネルギー損失分光法(EELS)で分析を行った結果を併記しました。網目状に見える部位にLiが濃集している様子が確認できました。図3は、図2に□で指示した部位の電子回折像で、Li濃集部が非晶質であることが分かります。このように、LiがSi内に吸蔵されていく過程を把握することができました。

当社では、紹介した事例のほかにも、劣化プロセス解明のための負極表層皮膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)の構造解析や、正極材料の表層近傍に存在する遷移元素についての原子レベルでの解析などの実績があり、電子顕微鏡を駆使した微細構造解析技術により、お客様での研究開発のスピードアップに貢献します。

図3 電子回折法による結晶構造解析
図3 電子回折法による結晶構造解析

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