プレスリリース
2025年07月01日
液体アンモニア環境材料評価試験設備を導入しサービス開始 -脱炭素社会実現に向けた技術基盤を強化-
〜次世代エネルギーキャリア・アンモニアの実用化を材料技術から支援〜
JFEテクノリサーチは、「液体アンモニア環境材料評価試験設備」を新たに導入し、各種産業用材料の液体アンモニア環境下における評価試験サービスの受託を2025年7月1日より開始いたします。本設備は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて国内外で注目を集める次世代エネルギーキャリアであるアンモニアの取り扱いに必要な材料選定や設備設計に不可欠な技術基盤づくりを支援するものです。
背景
現在、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向け、化石燃料に代わる新たなエネルギー源の開発や実用化が急速に進められています。中でもアンモニア(NH3)は、燃焼時にCO2を排出せず、液化しやすく高いエネルギー密度を持つため、次世代のエネルギーキャリアとして以下の分野での利用拡大が見込まれています:
- 火力発電所での混焼・専焼燃料
- 船舶用エンジンの代替燃料
- 水素キャリアとしての輸送・貯蔵媒体
- 各種産業用プラントにおける熱源
しかしアンモニアは強い腐食性を有し、特に液体状態では材料に対して以下のような特有の影響をもたらします。
- 応力腐食割れ(SCC)のリスクの高さ(鉄鋼材料、銅合金など)
- 微量の水分や酸素存在下でのSCCの促進または抑制
- 低温環境での材料靱性の低下
アンモニアを安全かつ効率的に取り扱うためには、各種材料の液体アンモニア環境下における材料特性や耐久性などを正確に把握し、適切な材料選定や設計指針を確立することが不可欠です。こうした技術課題に対応するため、JFEテクノリサーチでは鉄鋼業で培った材料評価の知見をもとに最新の評価試験設備を導入し、液体アンモニア環境下での材料挙動を適切に評価する技術を確立いたしました。
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液体アンモニア環境試験設備(外観写真) -
液体アンモニア環境試験設備(概略図)
導入設備の特徴と技術的優位性
今回導入した「液体アンモニア環境材料評価試験設備」は、実際の使用環境を精密に再現しながら、各種材料の耐アンモニア性を多角的に評価できる国内有数の試験装置です。
1)設備仕様
- 試験セル設計容量:3(L)
- 試験圧力:大気圧~2.0 MPa
- 試験温度:-35~50 ℃
- 添加ガス:N2, Air(O2)
- 添加物:CO2, H2O
- その他機能:撹拌機能、電気化学測定機能
2)本設備の特徴
本設備の最大の特徴は、実環境を精密に再現できる制御性と、多様な評価手法を組み合わせて総合的に材料を評価できる点です。腐食反応を促進または抑制する物質としてO2、CO2およびH2Oの添加が可能であり、電気化学測定機器と電極を用いた試験片への電位付与も実現しています。
これらにより、以下のような多様な評価試験が実施可能となりました:
- 応力腐食割れ(SCC)試験:
液体アンモニア中で試験片に応力を付加し、4点曲げ試験やU字曲げ試験などによるSCC感受性(発生しやすさ)評価 - 浸漬試験:
長期間の液体アンモニア環境暴露による外観変化、質量変化、腐食生成物の分析 - 電気化学測定:
腐食電位や分極挙動の測定による腐食メカニズムの解明 - 環境因子影響評価:
温度や圧力、不純物(水分、酸素、二酸化炭素など)が材料劣化に与える影響の定量化
3)総合的な材料評価ができる体制
JFEテクノリサーチの強みは、単なる試験設備の導入にとどまらない総合的な材料評価体制にあります。お客様のニーズに応じて、以下のような一貫したサービスを提供できます:
3−1)材料試験前
- 評価対象材(母材、溶接継手等)からの試験片加工および調整
- 試験材料の設計、試作(素材の溶製、圧延、熱処理)
- 溶接熱影響部(HAZ)の再現など、実使用条件を模擬した試験片の作製
- 試験前の機械特性評価(強度、硬さ、靭性等)
3−2)材料試験
- 多様な条件下での液体アンモニア環境暴露試験
- 実環境から加速試験までの幅広い試験条件設定
- 電気化学的手法を用いた腐食挙動のリアルタイムモニタリング
3−3)試験後評価
- 応力腐食割れ(SCC)発生の詳細評価
- 顕微鏡観察による微視的損傷評価
- 高度な物理解析や化学分析による劣化メカニズムの解明
- 腐食生成物の同定と形成プロセスの解析
期待される効果
本設備の導入と評価技術の確立により、液体アンモニアの製造や輸送、貯蔵、利用の各段階において利用される各種材料の課題解決につながるデータを取得できます。その結果、アンモニア関連設備の安全性や信頼性が向上し、次世代エネルギーキャリアとしての液体アンモニアの実用化促進や脱炭素化の加速が期待できます。
今後の展開
JFEテクノリサーチは、長年培った材料評価技術と今回導入した最先端の試験設備を生かし、2050年カーボンニュートラル実現に向けた技術課題の解決に貢献してまいります。アンモニアを中心とした次世代エネルギーキャリアの実用化を材料技術の側面から支援し、持続可能な社会の実現に寄与してまいります。
詳細は下記ホームページをご覧ください。
https://www.jfe-tec.co.jp/carbon-neutral/liquid-ammonia.html
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