プレスリリース
2025年09月04日
金属3Dプリントに特化した評価サービスを始動
成形方法に由来した異方性や微小欠陥を評価し、工程設計最適化を支援
このたび、JFEテクノリサーチ株式会社は、金属3Dプリント(積層造形)に特化した受託評価サービスの提供を開始いたしました。本サービスは、鉄鋼業で長年培ってきた金属分野の専門技術や経験と、評価・分析・解析・調査の受託会社としての豊富な実績を融合させたものです。的確な評価・解析を通じて、金属3D積層造形に特有の、異方性を有する組織構造や造形過程で生じる微小欠陥など、さまざまな技術問題の解決を支援いたします。これまでの知見と高度な分析技術を生かし、金属3Dプリントの品質向上と信頼性確保に貢献してまいります。
背景
金属積層造形技術は、従来の製造法では困難だった革新的なものづくりを可能にする技術です。最大の特長は、複雑な形状を直接造形できる点にあります。従来では多段階の切削加工や複数部品の溶接・組立が必要だった複雑形状も、3Dデータから一つの工程で完成品として製造できるため、製造工期を大幅に短縮し高精度な形状を再現できます。
さらに、中空構造やラティス構造など内部形状の自由度が高いことから、航空機部品では30%以上の軽量化、医療分野では患者固有形状に適合するインプラント製造など、さまざまな分野で応用が進んでいます。
一方で、層を積み重ねる造形原理に起因する機械的特性の異方性や、急速な溶融・凝固過程で発生する気孔・クラックなどの微小欠陥が、製品性能に影響を及ぼしています。特に、金属粉末の溶融池内での気泡の巻き込みや、材料の冷却速度の差による残留応力は、製品の信頼性確保において重要な評価項目です。
こうした技術的課題に対応するため、金属材料評価にて豊富な実績を持つ当社は、金属積層造形に特化した総合評価サービスを構築しました。材料技術と解析力を融合し、積層造形製品の品質向上と信頼性確保に貢献してまいります。
特長
- 先端分析技術
- 最新のX線CT装置や電子顕微鏡を駆使し、微小な内部欠陥や積層造形特有の微細組織を高精度に評価します。さらに、長さ約3mmの微小引張試験片を用いた独自の強度評価法を開発し、材料の異方性評価を可能にしました。
- 総合的な金属材料知見の活用
- JFEグループが長年培ってきた金属分野の専門技術や経験を基盤に、従来製法との比較評価や用途に応じた最適な材料・製造工程の提案など、技術コンサルティングサービスを提供します。
- ワンストップソリューション
- 材料(金属粉末)、造形プロセス、必要に応じた補修工程まで、用途に最適な工程設計を支援します。さらに、品質評価から不具合解析まで一貫して対応し、製品開発期間の短縮とコスト削減に貢献します。
受託評価サービス事例
- 3D積層造形品の評価項目と方法
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評価項目 方法 寸法 形状測定 機械特性 引張試験 疲労試験 硬さ試験 弾性率測定 衝撃試験 破壊靱性試験 クリープ試験 表面粗さ測定 曲げ試験 残留応力 X線回折 内部欠陥 X線CT 結晶構造 X線回折 結晶方位 EBSD 組織・欠陥構造 SEM、TEM 熱物性 熱伝導率測定 成分 化学分析 耐食性 塩水噴霧試験 複合サイクル試験 孔食電位測定 アノード分極曲線測定 - 事例1;3D積層造形したステンレス鋼の結晶欠陥の可視化
- 3D積層造形法で成形したステンレス鋼(SUS316L)を、走査電子顕微鏡(SEM)を利用したSEM-ECCI(Electron Channeling Contrast Imaging)法で観察することによって、積層造形由来の結晶欠陥構造(原子配列が乱れた転位や積層欠陥など)の分布を可視化でき 、材料特性に大きな影響を与える結晶欠陥を制御する造形条件の適正化を支援します。
SUS316L積層造形材のECC像(反射電子像) 拡大すると結晶欠陥構造の一つである原子配列の乱れ(=転位)が見られた。SEM-ECCI法では原子レベルの積層造形由来の欠陥を可視化できる。
- 事例2;微小試験片を用いた3D積層造形品の機械的特性評価
- 3D積層造形では複雑な形状の造形物を製作するケースが多く、それゆえ評価対象が微小となると想定されます。これに加えて、積層する造形原理から造形物は異方性を有していることから、造形方向に対して平行/垂直の2方向で物性を把握する必要があります。このような要求に応えるため、全長3mmほどの微小試験片で引張試験や疲労試験を行う評価法を確立しました。このデータを活用してCAE解析を実施し、目的に対して最適化されたデザインにつなげるなど、3D積層造形の信頼性向上を支援します。
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【評価事例】
積層方向におけるSUS316L造形物の引張特性
・強度 平行方向>垂直方向
・伸び 垂直方向>平行方向
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【微小試験片】
微小試験片形状
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- 事例3;3D積層造形品の最適デザイン提案と製品作成
- 開発試作品やリバースエンジニアリングなどを出発点とするお客様のアイデア形状を、高剛性と軽量化を両立するデザインをCAEなどの数理的解析をもとに最適化して提案します。必要に応じてJFEグループが所有する金属3Dプリンターにて出力し、造形品を提供する一貫サービスも行います。

トポロジー最適化を用いた製品開発フロー 
トポロジー最適化による軽量化検討事例

今後の展開
JFEテクノリサーチ株式会社は、今後さらに評価対象を拡大し、様々な造形方式への対応や、材料選定・造形条件の最適化支援を進めてまいります。また、蓄積した評価データの活用による品質予測技術の開発や、産学連携による新技術・標準化への貢献にも取り組み、金属3Dプリントのさらなる信頼性向上に努めてまいります。
JFEテクノリサーチの金属3D積層造形用評価サービスに関する詳細は下記ホームページをご覧ください。
https://www.jfe-tec.co.jp/tech-consul/3dp.html
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