プレスリリース
2025年09月30日
酸化物系全固体電池の実用化を加速する試作・評価サービスを開始
より安全性に優れた酸化物系固体電解質の可能性を引き出す一気通貫ソリューション
JFEテクノリサーチは、酸化物系全固体リチウム二次電池(以下、酸化物系全固体電池)の試作・評価サービスの提供を開始しました。
全固体電池は、電解質や電極などの構成部材が全て固体となっている電池です。可燃性の有機電解液を用いないため従来の液リチウムイオン二次電池と比較して発煙・発火リスクが低く、次世代の二次電池として注目を集めています。一般に、硫化物の固体電解質を用いる硫化物系全固体電池と酸化物の固体電解質を用いる酸化物系全固体電池に大別されますが、酸化物系の固体電解質は大気中の水分に対して安定しており、実用化に向けた研究が先行している硫化物系に比べてさらに安全性が高いことが特長です。そのため、定置用蓄電システムや航空・宇宙、ウェアラブル・医療機器、産業用機器、次世代スマートデバイスなど様々な用途での使用が期待されますが、電池特性の向上や難易度の高い製造条件の確立など、実用化に向けた課題が多く残されています。
JFEテクノリサーチでは、上記課題解決のための研究開発をサポートする各種関連技術を確立し、酸化物系固体電解質材料の試作、正極活物質-固体電解質界面の形成試作、酸化物系全固体電池の試作および性能評価など、材料試作から電池の組み上げ、性能評価まで、お客様のご要望にあわせた一気通貫の技術サービスを提供してまいります。

酸化物系全固体電池の試作・評価サービスの例
1.酸化物系固体電解質ペレットの試作・評価サービス
代表的な酸化物系固体電解質であるLi7La3Zr2O12(以下LLZO)系のペレット状成形体をパウダーベッド法で試作します。立方晶系のガーネット型結晶構造を有するLLZOに、アルミニウム(Al)など各種元素のドープ、焼結条件の変更などを加えながら固体電解質ペレットを作製し、電気化学特性評価(交流インピーダンス測定、金属Li対称セルによる溶解・析出試験)、物理解析(X線回折, SEM観察など)、化学分析(ICP-AESなど)といった評価・解析を通して、酸化物系全固体電池に適した固体電解質の開発をサポートいたします。

上記のような工程を経てLLZO系固体電解質のペレット成形体(直径φ12mm x 厚み0.5〜1mm)を試作します。お客様のご要望でドープ種および量、各工程の製造条件を変えながら試作が可能です。
図3 AlドープLLZOのX線回折パターン X線回折法にて、試作したLLZO系成形体の結晶構造を分析します。上図では目的物の無機結晶構造データベース(ICSD)のものと一致していることを確認しました。
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表1 AlドープLLZOのICP分析結果
化学種 Li Al La Zr wt% 4.93 0.83 48.9 20.7 at% 53.81 2.33 26.67 17.9 組成比 6.05 0.26 3 1.93 ICP分析にて、試作したLLZO系成形体の元素組成を分析します。目的どおりの組成であることを確認できました。
試作成形体のイオン伝導率(例)
10-4S・cm-1@25℃
試作したペレット成形体は、固体電解質としての性能の重要因子となるイオン伝導性の評価を行うことができます。
2.エアロゾルを用いた正極-固体電解質界面形成の受託試作サービス
従来、酸化物系全固体電池では加圧成形後に高温での焼結工程が必要であるため、正極活物質と固体電解質の界面で相互拡散や異相形成などが生じて、良質な界面の形成が難しいとされていました。
エアロゾルデポジッション法(以下、AD法)は、常温衝撃固化現象を利用した成膜技術で、セラミックス微粒子とArガスなどのキャリアガスとを混合したエアロゾルを低真空下において噴射することで、基板上に常温で高速にセラミックス層を成膜する技術です。高温焼結工程が不要なので、上記問題を解決する技術として期待されます。JFEテクノリサーチのAD法成膜装置を用いて、お客様からご支給いただく電池材料(正極材、固体電解質)から正極-固体電解質界面を形成試作し、さまざまな条件検討にも対応できます。

正極材料(LiCoO2+Li3BO3コンポジット)の微粒子をArガスと混合したエアロゾルを、LLZO系固体電解質ペレットに低真空下で吹き付け、右図の複合体(正極-固体電解質界面)を形成した事例です。
3.酸化物系全固体電池試作・評価サービス
酸化物系全固体電池では負極材の候補材料がいくつかありますが、当社ではそのうち金属リチウム(Li)を負極とする酸化物系全固体電池の試作と評価が可能です。お客様のご要望にあわせて上記1.や2.で試作した固体電解質、正極などと金属Li負極とを組み合わせて電池としての性能を評価します。正極にLiCoO2+Li3BO3コンポジット正極、負極に金属Li箔も用いた試作電池の充放電サイクル試験結果を図5に示します。
正極にLiCoO2+Li3BO3コンポジット正極、負極に金属Li箔も用いた試作電池の充放電サイクル試験を実施した事例です。これらの試験から、充放電容量や充放電を繰り返した際の容量低下など重要な電池特性を評価します。
4.酸化物系全固体電池の試作設備
JFEテクノリサーチでは表2に示す試作設備をご用意しております。お客様のニーズに合わせた電池部材や酸化物系全固体電池の試作や評価を実施できる体制を整えています。
表 2 酸化物系全固体電池試作用設備
設備 | 主な仕様 | 備考 |
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遊星ボールミル | 500ml粉砕容器2個搭載 | |
温間静水圧プレス(WIP) | 加熱上限温度200℃ 最大化圧力1000MPa |
かごサイズφ45×78mm |
LLZO焼成用マッフル炉 | 最高常用温度1200℃ | 材料によっては使用制限あり |
正極活物質焼成用マッフル炉 | 最高常用温度1050℃ | 材料によっては使用制限あり |
ニュートンプレス | 二軸プレス | |
ペレット成形金型 | 直径φ15mm、Max20MPa | |
Auスパッタ用卓上クイックコーター | 最大電流値5mA | |
エアロゾルデポジッション装置 | 到達真空度 70-80Pa | キャリアガスAr |
遊星ボールミル 温間静水圧プレス
JFEテクノリサーチでは、これまで培った幅広いソリューションをベースに、自動車メーカーや電池メーカー、材料メーカー、研究機関の皆様からのご要望にワンストップで対応する体制を整え、酸化物系全固体電池の開発を後押ししていきます。
詳細は下記ホームページをご覧ください。
https://www.jfe-tec.co.jp/battery/solid-state_battery/oxide-based.html
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